id   series 2013 -

EGO seriesと密接に関係した作品群。

私はこのシリーズの中で現実と密接に関わりのあるもうひとつの現実と向き合っている。だがそれは容易にはお目にかかることができない対象だ。私の「視覚野」に存在する「実際的」な事柄には違いないが、ただぼんやりと待っているだけでは決して直面することはできない。だがそれが私の中に存在しているのは確かなようだ。感知の先にその現実はある。ただ明瞭な実体を持っていない。そのもうひとつの現実は、おそらく私の中にある無意識と関係しているのだろう。

私は今、そのもうひとつの現実に不確かな実体を与えようと試みている。それには、すべからく実際的で能動的な行動が求められる。具現化、あるいは具体化するには様々な困難がつきまとうが、きっとやりようはある。幸わい、これまでにいろいろと積み重ねてきたロジックのようなものが私の中にはある。それは実際的な手段となって、なす術がないはずの状況に路を与えてくれる。

対象は私の視覚野にあり、足がかりは自身の手仕事の先にある。私は客観的な視座を傍らに置きながらも、あくまでも無意識と向き合う。それは、現実と非現実の境目にある不確かな地表を慎重に歩いていくような感覚である

id - エゴのない世界 -  mixed media / panel  2014 - 2015 制作途上

id - 不確かな地表に視えるもの-  mixed media / panel

この揺らぎは、心臓の鼓動だ。

外側の世界の彼女自身が、心臓から赤い血を体中に巡らし、 この世界を震わせている。呼吸は静かなままだが、体温が少しずつ上がっていく。彼女は体の内側に異変を感じた。 何かが起ころうとしている。このモノクロの世界に変化の時が訪れようとしている。いや、もしかしたらそれは変化とは少し違うかもしれない。何かが何かへ進化したり、物事の組成のしくみが組み替えられるというような、「原因と結果」としての成り行きとは少し事情が異なるかもしれない。

この世界には始めから「在る」べきものが際限なく「在る」だけなのかもしれない。箱の中に始めから用意されたパズルのピースのように、在るべきものがまるで唯一の言葉のようにしかし無限に散らばっているだけなのかもしれない。

(個展『 Re:REAL 』  2016年開催予定)

 

id - Surrogate -  mixed media / panel  2014 - 2015

id - 声のない対話 -  mixed media / panel  2013 - 2014